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ランタン好きな彼女

「見てこれ!可愛かったから買っちゃった!」
嬉しそうに話す君の手には、盗賊のランタン。
「この前も買ってなかったか?」
そう、たしか先週。
今日の服にはこの色がイイのと言いながら黄色いランタンを買っていたっけ。
「うん、でもね。今日の服にはこの緑のランタンが似合うと思わない?」

今日の彼女はダブレットとキルトとサンダルが
微妙に色の違うオレンジでまるでグラデーションのよう。
帽子だけ淡い緑でまるでカボチャのコスプレみたい。

「…うん、似合う。とっても」
食べてしまいたいと思ったことは伏せていよう、そうしよう。

彼女は服を褒めていればご機嫌。
狩りやおしゃべりやなによりも、コーディネイトを考えることに一番時間をかける。

待ち合わせしているわけではないが、
銀行にいるとたいてい着替え終わった彼女が姿を見せる。
まるで、俺を探してるように…と良い方に解釈するのは簡単だが、違う。
彼女は考えたコーディネイトを多くの人に見せたい。
ただ、それだけ。
人が多い銀行に来るのは至極もっともな話しだ。

「このランタンて100色あるんだってー。
それだけあったらどんなコーディネイトにも合わせられるよねっ。集めよっかなー!」
無謀とも言えるその言葉も彼女ならできる気がしてしまう。

「この前出会ったシーフさんが、盗れたらくれるって言ってたの。本当かなー!楽しみっ」
な、なにっ。
知らないうちにライバルがいたのか。
家と銀行の往復みたいなのに、彼女はいつ俺の知らないところで誰かと会ってるんだ?
「そんな簡単に盗れるもんじゃないだろ?
ほら、さっき狩りして金もってるから、何個か買ってやるぞ」
物で釣るしか能がない、なんて言うなよ。
彼女がほしいものなら何だって用意したい。
ただ、今はランタンなだけだ。

「そんな悪いよ!安くないんだよー?」
いいよいいよ、そんな言葉。
結局買ってほしいんだろ?わかってるわかってるけど、
喜んでる姿が見たくてつい甘くなってしまう。
「いいよ、お金ばっかあったって、しょうがないからな。そのかわり…」

そこで区切ると、彼女はどうしたの?と少し首をかしげこちらを見てくる。
ふと見せるそんな姿さえ可愛くて、本当なら誰にも見せたくない。
「その…俺が買ったランタンでコーディネイトするときは、俺に一番に見せてくれよな」
うん、これくらいしか言えない。
気の聞いた彼女を喜ばせる言葉も、
彼女の心をつかむような言葉も
自分の気持ちを察してもらうような言葉も言えない。

ただ、喜ばせたくて
喜んだ顔をこちらに向けてもらいたくて
彼女の心を幸せに満たしたくて。

掴んで離したくないのに
手を伸ばしたら逃げてしまいそうで
いつも伸ばしかけた手を引っ込めてしまう。

「大丈夫だよ。私いつも最初はあなたに見てもらいたくてここに来てるんだよ」
彼女はにこっと笑ってそう言うと、
俺の手を取り、最近見つけたランタンが数多く用意されている店に連れて行くと言った。

俺は銀行にいくら入ってたかと考えながら、、彼女に掴まれた手を少しだけ握り返した。


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彼女は策士ですなぁ…きっと。
ランタン1つ49,800gpで彼女を喜ばせられるなら
買いますか?買いませんか?

私も詠唱可ランタン大好きですが、
もちろん自分で買ってます…。
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by Kirill_Books | 2013-10-14 14:23 | 綴られたモノ | Comments(0)

Ultima Online 瑞穂シャードでUO小説書いて本屋をやってたりするキリルの話だったりなかったり。


by Kirill_Books