During travel 4/7
2014年 10月 18日
セレスティアから比較的安全な誠実という名のムーンゲートとゲートを出てすぐリーパーやインプがいるが一本道でわかりやすい正義という名のムーンゲートの話を聞いて、すぐに正義のムーンゲートから行くことを決めたのはヴァルラスだった。
「わかりやすい道のほうがいいだろ」
戦士というのはこうも単純なものなのだろうかと思いながらアシルはリュートを奏で、二人と一頭はミスタスへ道を急ぐ。
「そういや、ミスタス入り口あたりにテントを張っているジプシー達には気をつけろとセレスティアが言ってたな」
いくつかテントが見えてくるとヴァルラスがそう呟いた。
「なぜですか?」
「なんでも、旅人を狙ってたかりにくるらしいから決して言葉を交わすなと言ってたぞ」
カラフルな格好をしたジプシーたちが笑顔でアシル達に手を振ってくるが、二人と一頭はそれを無視しミスタスの入り口へ向かった。
入り口近くの橋にジュカウォーリアの姿が見え、ヴァルラスのメイスを持つ手に力が入った。この街でアシル達は侵入を許される者ではないのだ。
「ヴァルラスさん、無駄な戦いはやめましょう」
アシルがリュートを持ち、トワイスの背中を二度ほど軽く叩いてからまたがった。アシルがトワイスに乗ることはほとんどなく、これだけでアシルが真剣だということがヴァルラスにも伝わってきた。
「では行きますよ」
アシルのリュートに合わせて少し小走りに街の中に入っていく。
街の中では時々ジュカ族が歩いているが、アシル達は見つからないように建物の影に隠れながら街の奥へと進んだ。
ちょうど街の東側を囲むように川が流れ、滝のようなものがある。
そこの近くにある広い空き地にカオスドラグーンはいた。
二本の角が生えた兜を被り、ドラゴンの鱗で出来た黄色に映える鎧を来たカオスドラグーン。
スワンプドラゴンに乗り、刀とカオスシールドを持ちゆっくりと周りを見渡しながら歩いている。
「あいつを倒さないとスワンプドラゴンは捕まえられないってことだな」
そう言うとヴァルラスは飛び出し、カオスドラグーンと対峙する形になった。
急に飛び出してきた異人にカオスドラグーンはすぐに反応を示さなかったが、やがてそれが排除すべき者と認識したのか兜の奥の眼を光らせてきた。
ヴァルラスは視線を外さないよう睨みつけながら一度注意深く頭を下げ、ダイヤモンドメイスに力を込めた。カオスドラグーンもまたヴァルラスを睨みつけながらスワンプドラゴンの腹を足で数度叩き突進した。
アシルにはお互い一歩も引かずにただ叩き合ってるように見えていたが、一瞬の差でヴァルラスが相手の攻撃を盾でかわしメイスの鈍い音をたててカオスドラグーンに数度叩き込んだかと思うと、状況はヴァルラスの一辺倒になった。
いざというときはトワイスも加勢しリュートを奏でようと思っていたアシルは、ヴァルラスがフォンドール家に認められた戦士ということを今更ながら実感していた。
「おら、とどめだ!」
ヴァルラスの声と共に大きく振りかぶったダイヤモンドメイスがそのままカオスドラグーンの顔に叩き込まれ、骨が砕ける鈍い音が聞こえたかと思うとゆらりとスワンプドラゴンから崩れ落ちた。
主を失ったスワンプドラゴンはそのままよたよたと歩き回っている。
「アシル、今のうちだ」
アシルはトワイスから降り端で待たせ、ゆっくりとスワンプドラゴンに近づいていった。
急に主を亡くし混乱したスワンプドラゴンはアシルが近づいてくることにさほど興味を示さなかった。
アシルはじっとスワンプドラゴンの目を見ながら囁いた。
*ほら、良い子だね・・・*
*君を飼いたいと言ってる女性がいるんだ…*
*僕達の元へおいで…*
もともと飼われていたスワンプドラゴンがそのような言葉でついてくるはずもなく、急に目が大きく見開かれたかと思うと、アシルへ突進してきた。
アシルはスワンプドラゴンから目を離さずに後ろ向きで数歩下がり、リュートを取り出しきれいな音色を響かせ始めた。
心が温かくなるような、穏やかな気持ちにさせるようなその音色はアシルだからこそ出せる音色であろう。
スワンプドラゴンも足を止めその音色を聴き入った。
*なにも怖くないよ…*
*僕達の元においで…*
*一緒に行こう…*
その音色にのせ歌うように語り掛けるアシルの声を少しずつ受け入れたスワンプドラゴンはようやくアシルになついたのだった。
「はい、ヴァルラスさん」
なついたスワンプドラゴンに乗るように言うアシルにヴァルラスは戸惑った。
常に徒歩が信条のヴァルラスはここ何年も騎乗することがなかったからだ。
「ジュカ族に見つからないように今度は宿屋に行かなければならないんですよ。このよたよたしたスワンプドラゴンを連れて見つからずにいけると思いますか?」
たしかにアシルの言うとおり。
普段トワイスに乗らないアシルでさえ、自らトワイスに乗っているのだ。
ここで自分のこだわりを曲げずスワンプドラゴンを連れて歩けばすぐにジュカ族に狙い撃ちにされる。
自分のことよりもまずは一緒にいる仲間のために、ヴァルラスはぶつぶつ言いながらもスワンプドラゴンに騎乗した。
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昔参加していたUltima Online 三題噺(UO三題噺)。
インビジ企画(2007年10月20日締切)のものは
こちらに掲載したことがなかったと思うので今頃掲載。
UO三題噺 第五回目:「岬」「ミスタス」「雪化粧」 (インビジ作家企画 2007/10/20 〆切り)
■During travel 1/7
■During travel 2/7
■During travel 3/7
■During travel 4/7
■During travel 5/7
■During travel 6/7
■During travel 7/7
「わかりやすい道のほうがいいだろ」
戦士というのはこうも単純なものなのだろうかと思いながらアシルはリュートを奏で、二人と一頭はミスタスへ道を急ぐ。
「そういや、ミスタス入り口あたりにテントを張っているジプシー達には気をつけろとセレスティアが言ってたな」
いくつかテントが見えてくるとヴァルラスがそう呟いた。
「なぜですか?」
「なんでも、旅人を狙ってたかりにくるらしいから決して言葉を交わすなと言ってたぞ」
カラフルな格好をしたジプシーたちが笑顔でアシル達に手を振ってくるが、二人と一頭はそれを無視しミスタスの入り口へ向かった。
入り口近くの橋にジュカウォーリアの姿が見え、ヴァルラスのメイスを持つ手に力が入った。この街でアシル達は侵入を許される者ではないのだ。
「ヴァルラスさん、無駄な戦いはやめましょう」
アシルがリュートを持ち、トワイスの背中を二度ほど軽く叩いてからまたがった。アシルがトワイスに乗ることはほとんどなく、これだけでアシルが真剣だということがヴァルラスにも伝わってきた。
「では行きますよ」
アシルのリュートに合わせて少し小走りに街の中に入っていく。
街の中では時々ジュカ族が歩いているが、アシル達は見つからないように建物の影に隠れながら街の奥へと進んだ。
ちょうど街の東側を囲むように川が流れ、滝のようなものがある。
そこの近くにある広い空き地にカオスドラグーンはいた。
二本の角が生えた兜を被り、ドラゴンの鱗で出来た黄色に映える鎧を来たカオスドラグーン。
スワンプドラゴンに乗り、刀とカオスシールドを持ちゆっくりと周りを見渡しながら歩いている。
「あいつを倒さないとスワンプドラゴンは捕まえられないってことだな」
そう言うとヴァルラスは飛び出し、カオスドラグーンと対峙する形になった。
急に飛び出してきた異人にカオスドラグーンはすぐに反応を示さなかったが、やがてそれが排除すべき者と認識したのか兜の奥の眼を光らせてきた。
ヴァルラスは視線を外さないよう睨みつけながら一度注意深く頭を下げ、ダイヤモンドメイスに力を込めた。カオスドラグーンもまたヴァルラスを睨みつけながらスワンプドラゴンの腹を足で数度叩き突進した。
アシルにはお互い一歩も引かずにただ叩き合ってるように見えていたが、一瞬の差でヴァルラスが相手の攻撃を盾でかわしメイスの鈍い音をたててカオスドラグーンに数度叩き込んだかと思うと、状況はヴァルラスの一辺倒になった。
いざというときはトワイスも加勢しリュートを奏でようと思っていたアシルは、ヴァルラスがフォンドール家に認められた戦士ということを今更ながら実感していた。
「おら、とどめだ!」
ヴァルラスの声と共に大きく振りかぶったダイヤモンドメイスがそのままカオスドラグーンの顔に叩き込まれ、骨が砕ける鈍い音が聞こえたかと思うとゆらりとスワンプドラゴンから崩れ落ちた。
主を失ったスワンプドラゴンはそのままよたよたと歩き回っている。
「アシル、今のうちだ」
アシルはトワイスから降り端で待たせ、ゆっくりとスワンプドラゴンに近づいていった。
急に主を亡くし混乱したスワンプドラゴンはアシルが近づいてくることにさほど興味を示さなかった。
アシルはじっとスワンプドラゴンの目を見ながら囁いた。
*ほら、良い子だね・・・*
*君を飼いたいと言ってる女性がいるんだ…*
*僕達の元へおいで…*
もともと飼われていたスワンプドラゴンがそのような言葉でついてくるはずもなく、急に目が大きく見開かれたかと思うと、アシルへ突進してきた。
アシルはスワンプドラゴンから目を離さずに後ろ向きで数歩下がり、リュートを取り出しきれいな音色を響かせ始めた。
心が温かくなるような、穏やかな気持ちにさせるようなその音色はアシルだからこそ出せる音色であろう。
スワンプドラゴンも足を止めその音色を聴き入った。
*なにも怖くないよ…*
*僕達の元においで…*
*一緒に行こう…*
その音色にのせ歌うように語り掛けるアシルの声を少しずつ受け入れたスワンプドラゴンはようやくアシルになついたのだった。
「はい、ヴァルラスさん」
なついたスワンプドラゴンに乗るように言うアシルにヴァルラスは戸惑った。
常に徒歩が信条のヴァルラスはここ何年も騎乗することがなかったからだ。
「ジュカ族に見つからないように今度は宿屋に行かなければならないんですよ。このよたよたしたスワンプドラゴンを連れて見つからずにいけると思いますか?」
たしかにアシルの言うとおり。
普段トワイスに乗らないアシルでさえ、自らトワイスに乗っているのだ。
ここで自分のこだわりを曲げずスワンプドラゴンを連れて歩けばすぐにジュカ族に狙い撃ちにされる。
自分のことよりもまずは一緒にいる仲間のために、ヴァルラスはぶつぶつ言いながらもスワンプドラゴンに騎乗した。
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昔参加していたUltima Online 三題噺(UO三題噺)。
インビジ企画(2007年10月20日締切)のものは
こちらに掲載したことがなかったと思うので今頃掲載。
UO三題噺 第五回目:「岬」「ミスタス」「雪化粧」 (インビジ作家企画 2007/10/20 〆切り)
■During travel 1/7
■During travel 2/7
■During travel 3/7
■During travel 4/7
■During travel 5/7
■During travel 6/7
■During travel 7/7
by Kirill_Books
| 2014-10-18 14:15
| 綴られたモノ
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