カテゴリ:綴られたモノ( 53 )
End Of...
暑いですね。
暑い中で、きゃっきゃうふふのハッピーエンドなど
想像もできないのです。

こんな暑い時期には、もっとこう…
じわじわくる怖さとか気持ち悪さとか
そういう方向のほうが考えやすいし、書きやすい。

というわけで、
お祝いと思える日に、本当に祝う気あるのか?という本をいただいたので
お返しに、本当にお礼を言う気があるのか?という話を書いてみました。



-----
End Of...

「君が心配する必要もないくらい、元気になって帰ってくるから」
彼はそう言って、旅立って行った。
どこの街へ行くのか、どこのアルケミストに頼るのか、何も教えてくれず。

どちらの空に向かって祈ればいいのかもわからぬまま
いつ帰ってくるのかも知らぬまま
すでに十分すぎるくらい心配してるし、不安になってるんですよ、と
彼に伝えたくても方法がなく
ただ眠れず、涙する日々が続いていた。


そして…

-----

こんな始まり。
※気持ち悪さを目指して書いたくらいの気持ち悪さなのでご注意。

End Of…
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by Kirill_Books | 2015-07-29 21:30 | 綴られたモノ
ハンマーガール
「お兄ちゃん…私鉄打ちたい…」
糸車の横に立つ妹は、ハンマーをぎゅっと握ってそう言った。
「仕方ない、さっさとやっちまおう」
俺は妹の気持ちを落ち着けるように
現状がそれほどたいしたことじゃないと思っている雰囲気で話した。
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"鍛冶屋と裁縫屋"
まるで二つでセットのように扱われる店と店。
長く続く一族同士が認め合って生きている…わけがない。

色とりどりの布を扱って
ファッション最前線で働く裁縫屋と違い、見た目よりも頑丈第一。
熱い中で鉄を打ち、年中汗臭く
ハンマーを持つ手だけ妙に筋肉がついて、いびつな体。
裁縫屋の一族は、そんなダサい鍛冶屋といつも一緒と思われるのが
嫌で仕方がないらしい。
俺達は自分の仕事を力いっぱいしているだけなのに。

ニューマジンシアの裁縫屋は、
トレーダークエストの導入でルナに追いつくかと思われるほど稼ぎ始め、勢いついている。
それに比べ、俺達兄妹に任された品疎な売上げの鍛冶屋は
調子付いた裁縫屋に馬鹿にされっぱなしだった。

「ほら、その太い腕で糸車回しといてちょうだいっ」
裁縫屋の店主が妹に指図する。
妹はそのバシネットの中で泣きながら、糸車をまわす。
「あんたたち暇でしょ。こっちは接客で忙しいんだから
あんた達が糸紡ぎなさいよ」
確かに…一日中、裁縫屋は盛況で客が入れ替わり立ち代りやってくる。
裁縫屋の長が、ニューマジンシア首長に賄賂を渡したとかで
この街は配達で、裁縫屋の製品しか注文が来ない。
だから裁縫屋のやつらは得意げに、全く客の来ない俺達を馬鹿にし、糸を紡がせる。

「おにいちゃん、私あの人たち嫌い」
片時もハンマーを放さない妹が不憫でならない。
妹も裁縫屋に生まれたら、煌びやかな服を着れたのに。
女の子が生まれても、うちの一族は容赦しない。
初めて与えられるおもちゃがハンマーで
誕生日ごとに少しずつ重いハンマーを与えられる。
物心ついた頃にはハンマーの持つ腕が、2倍以上の太さになる。
本人が鍛冶屋を継ごうか悩む間もなく、継ぐこと前提で育てられる。

妹は疑うことなく鍛冶屋の娘として
ハンマーを片時も放さず、
一人前の証として父からもらったバシネットを喜んで被る。
俺よりも鍛冶屋の仕事が大好きで、
もしかしたら俺よりも太い片腕をもっと太くしたいと言う。

「あいつらが忙しいのは仕方がない。ほら、助け合いも大事だ、な」
思ってもいないことをいい、妹をなだめる。
俺達が暇で、あいつらが忙しいのは事実だ。

「私、鉄打ちたい。クレセントブレード作りたい…」
妹は大人しい子だが、稀に心に溜め込んで爆発するところがある。
今のこの状態が続くと、いつか何かをしでかすんじゃないかと気が気でない。
「うんうん、そうだな、作りたいな。夜になってあいつらが店仕舞いしたら作ろうな」
穏やかに、ゆっくりと言い聞かせるように言う。
何度も何度も。



そして夜になり、あいつらが帰った後、妹は嬉々としてハンマーを振るう。
「私あと、メタルシールドとクローズヘルムも作ってから帰るー!」
もう夢中で、そろそろ帰ろうという俺にそう答える。
バシネットの中では、きっと笑っているのだろう。
ようやくハンマーが振るえる。
やっとやりたかったことができる。
鍛冶しか知らない子に育てられたのだから仕方ないのだろうか。
不安になりながらも、早く帰れよと声をかけ俺は家に帰った。

なれない糸紡ぎに疲れたのか、俺は妹を待つつもりが気づいたら寝てしまい、朝。
家の中には妹がいる様子もなく、不安な気持ちで店へ出勤する。
「おにいちゃん、おはよー!」
妹は昨日と変わらず店で、ハンマーを振るっていた。
「お、お前帰らずずっとやってたのか!」
「うんっ、すっごく楽しいい!私もう糸車回したくない!」
ガツンッガツンッと振るう腕にその気持ちが込められているのがわかる。
「それにしたってもう朝だ、裁縫屋が出勤してくるだろ」
とはいえ、この時間になっても誰も出勤してないのが不思議だ。
「大丈夫だよー。
あの人たちの家にいって、カツンッカツンッて。えへへ」
え…?
カツンカツンて?
えへへって笑える状況なのか?
「おにいちゃんも早く仕事始めなよー」
妹にこれ以上聴くのが怖くて、でもこのまま聞き流していい事じゃない気がして。
声をかけようとした時に気づいた。
妹が打っているロングソードにハンマーの形で赤黒い跡がついていること。
それをじっと見ている俺に気づいた妹は立ち上がって俺に近づく。
「おにいちゃん。早く仕事しないと、私怒るよ?」
静かな声でそう言いながら、ハンマーをぶんぶんと振った。


-----
ニューマジンシアはどうして、
鍛冶屋と裁縫屋が逆に場所にいるのかなと考えてたらこうなった。
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by Kirill_Books | 2015-05-04 14:27 | 綴られたモノ
[埋まる秘書 番外編k] 打ち上げパーティまであと何日?
○ 各部担当
あらすじ、台詞 : Kirill
一人称視点 : Kirill

○  登場人物
Anne : ご存じ北斗ブリテインの首長で、本作のヒロイン? 何かある度先走らずにはいられない
turnip : アンの秘書。ちなみにトリンシックからの出向で、カブ。光合成が必要
Kirill : 瑞穂シャードの物書き。北斗ブリでも文芸イベントを手伝っている

○ 姉妹話
[埋まる秘書 番外編t] 打ち上げパーティのお知らせ : トリンシックDays

――――――――――――――

予定時間に合わせて、首長私邸にやってきた。
音を立てないように階段を上がり、
展示会場の上、関係者しか入れない首長私室のドアを、小さくノックをする。
ゆっくりとドアが開き、秘書であるカブが姿を見せたので声をかける。

「首長はどう?」

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「2時間で3行というところでしょうか」

カブは小声で伝えてきた。

「えっ!打ち上げパーティまであと数日だよ?その執筆速度で大丈夫なの?」
「大丈夫とは全く思えません」

いつもの落ち着いたカブの言葉の印象とは逆に、内容は今後の予定を不安にさせるものだった。

「打ち上げパーティ…延期…かなぁ…」
「いえ、4月の最初の週と告知してますので、延期は避けたいです」

部屋の奥で唸っている首長を気遣ったつもりで、
さりげなく延期を提案してみたが、バシッとカブが否定する。
さすがだ。

「じゃあ、原稿料だけあとで渡す?」
「それも避けたい…。
 そうですね、心の綺麗な人にだけ見えますと言って空の本を渡すというのはどうでしょう?」
「それ大丈夫と思って言ってる?」
「いえ、冗談ですよ。ははは…」

…こんな笑えない冗談をいうほど、
カブもやられているというわけだ。

「カブもかなりお疲れだな…。もう交代するから帰って寝たほうがいいよ。首長は無理だけど」
「ええ、そろそろ首長には徹夜してでも書き上げてもらうしかないようですね」

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「え、ということはもしかして…」

カブは嫌な…私にとっても、とても嫌な言葉を口にした。

"徹夜"

それは…もしかして…

「もちろん、私達も24時間体制で監視ですよ」
「うわぁ…やっぱり…」

やっぱりね…
今でさえ、首長が私室に篭ってる時は、監視体制だもんね。
そうなるよね…

「とにかく首長が書き上げてくれることを信じて、私達は監視しましょう」

カブが首長を信じてるようで、それどうなの?どっちなの?って言葉を言う。
いや、わかるよ。
信じたいけど、うん。
打ち上げパーティにアレだけ目玉になってサブタイトルにもなってる
首長の本が間に合わないってなったら…ていう不安が付きまとうのよ…

「監視…それ信じてないよね…」
「細かいことは言わない!」

きっとカブも似たような気持ちでいるのだろう。
私達はお互い覚悟のようなものを感じてから
私は部屋に入り、カブは帰途に着く。
首長の執筆が一行でも進むことを信じて。


――――――――――――――



ブリテイン文芸大会 [Third] ~アンさま秘密の物語~ in Hokuto

◇ 打ち上げパーティのお知らせ ◇



現在展示会を開催中の文芸大会のしめくくり、打ち上げパーティの予定をお知らせします。
これは主に、作者の皆様へ集まった感想と、アンさまからの原稿料をお渡しする催しです。
けれど出来れば読者の皆様にも集まっていただき、賑やかに行いたいと考えています。

……原稿料が完成していればですが。
もしもの時は、アン様謝罪会見に予定を変更いたします。

作者さんも、読者さんも、もちろん両方の方も。
皆様のご来場をお待ちしています!



○ 日程

4月4日(土)

~20:00 - 感想受付の締め切り
22:30~ - 打ち上げパーティ


特にEMイベントの日程によっては、日時を変更する可能性もあります。
もしそうなった場合にはまた告知させていただきます。



○ 場所

同じく展示会場にて。



○ 備考

・ 打ち上げパーティの開催に合わせて、勝手ながら感想の受付を閉め切らせていただきます。
ぜひ、それまでにお届けください。

・ もちろん打ち上げパーティ以外でも、感想と原稿料をお渡しします。
打ち上げパーティ以降に連絡していただければと思います。



○ リンク

ブリテイン文芸大会 [Third] ~アンさま秘密の物語~ / in Hokuto 展示会告知(首長ver.)
Britain Book Event 03 / Exhibition(秘書ver.)

Third Exhibition - 作品リスト
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by Kirill_Books | 2015-03-19 23:00 | 綴られたモノ
フラワーエレメンタル
今がその時ではないだろうか。
自らの意思で、自らの存在を示す、その時。


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母は外にいる人間に聞こえぬように、話して聞かせてくれた。
祖母は確か、コーガルの腹の中から見つけられた一つ。
それを花屋が育て、母が生まれ、私が生まれた。
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風が吹いた時の動き方や
目立たずにさり気なく育つこと、
暇でも勝手に動かない忍耐は言い聞かされてきたし、
生まれた時から身についていたと思う。

誰かに育てられて
私は花らしく振舞って一生を終えるのだ。

それでも、時に思う。
なんなのだ
私は。

そこらに咲いている花と私の違いはなんなのだと。
周りをじっと見ても、私のようにたまにワンテンポ遅れて
そよがれるようなヘマはしない。
きっと真っ当な花なのだろう。
では、私はなんなのだ。

本来なら風に吹かれたぐらいではびくともしない。

本来であれば、
「綺麗だね」と呟く人間に
「あなたに比べればね」と言える位はできるのに
言ってはいけない、声を発してはいけないのだ。

母は人間を驚かさないように、
花のように振舞いなさいねと言っていたけれど、
そんな理由なのだろうか。
そんな理由で自分らしく動いてはいけないのだろうか。
私は。

…と思っていたのだけど。
今まではそう悩んでいたのだけれど。

あちこちで買い集められ、今この大桶の中に飾られている
私達
大桶の中で風の当たり方がちょっと違うからなのか
私達
なんだか皆少しずつ
動きがおかしいと気づいた。

時に視線を感じる。
誰が一番先に正体をばらすのかと、
お互いにけん制しあってるような
せーのっで言ってしまったほうが楽じゃないかと
私達
せっかくこう出会えたのに
私達

タイミングを探している。
私達
解放されようとしている。



…大桶の中を覗き込む人間達がいる。

今がその時ではないだろうか。
自らの意思で、自らの存在を示す、その時。
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大桶の中の花が一斉に
「私きれい?」
と好き勝手に舞っても
私達を今までのように綺麗と言ってくれるだろうか。


-----
きっかけ↓
某日、北斗文芸大会 会場で花桶を見ながら

秘書: わさわさ
秘書: してる
Kirill: なんかすごい生命体が
Kirill: うまれてそう
職人: 花エレとか
職人: いそう
Kirill: 花エレ!
Kirill: なにそれ
Kirill: かわいい
首長: ww
秘書: フラワーエレメンタル・・・!
秘書: それで一冊書けそうな
Kirill: かけそうだ
秘書: 名前出ましたね


希少生命体は代々、一般的な花と同化してばれないように
生きてきて、他に仲間はいないと思っていたけれど
色んなところから集められたところにきたら
あれ?もしかして同種族いっぱいいるんじゃね?
そしたら、花の真似事して小さくなって生きてなくても
別にいいんじゃね?
って思うようになったみたいな

あらすじかけば、すごい簡単なことなのに
どうしてこういう話になってしまうのか。

勉強だなー
練習だなーと思うのだけど

一つの話をこねくり回しても
劇的に変わることはなかなか難しいので
これは、これで。


こんなすごい花桶(いけばな?)を見れる展示会場についてはこちら!
■Britain Book Event 03 / Exhibition / トリンシックDays
■ブリテイン文芸大会 [Third] ~アンさま秘密の物語~  in Hokuto 展示会告知 / ブリ首長になったAnneの日記
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by Kirill_Books | 2015-03-19 00:43 | 綴られたモノ
ライキューム独立宣言
文芸大会の締切過ぎましたね…
昨日の23:59でしたね…
過ぎてしまいました。


ここでボツネタを一つ。

「ライキューム独立宣言」

1.
ライキュームから数年前に飛び出してったある男が帰ってくると一通の手紙をよこした。
あの男は確か、飛び出してったあと、発見されたばかりのアンブラに行ったはず…

研究員達は、口々に
「逃げてった奴が今頃なんだ!」
とか
「ネクロマンサーが来るのか!ネクロ魔法の研究か!」
など噂していた。

その中で飼われていたラマ一頭だけが危機を感じ
ムーングロウ首長にこの情報を伝えに行った。

2.
その頃ムーングロウ ヘラルド前では
今期初当選した首長が初めてのギルド契約を行っているところだった。
「よしっと、私の仕事は評議会への出席とギルド契約の継続。
あとは平穏に半年過ぎてくれるのを願うわ」
元首長という肩書ほしさのために一度だけと思って首長に立候補した女だった。

3.
頭からすっぽりと黒いフードをかぶった男がライキュームに現れた。
「昔と全然変わってないな。風と本のめくる音だけ。
俺が、俺が変えてやる」
研究員たちは男がやってきたことに気づいていたが
研究を優先したいのと、
逃げ出してった奴が今更戻ってきて何ができるという思いもあり
遠くから静観していた。
フードの男はライキューム中央にいきなり大それた形の重そうな椅子を設置し
大きな声でこう宣言した。
「今日ここに、ライキュームの独立を宣言する!」


4.
ようやくムーングロウについたラマは首長を探した。
ちょうど首長官邸に人影を見つけ、叫んだ。
「ライキュームが大変なことになりそうだ!」
その声を聴いたのはまさしく首長。
さっき首長になったばかりの、平穏無事に半年過ごしたいと思っていた首長だ。
「えっ・・・大変なことに・・・なりそう・・・?」
あまりの不確定要素が多すぎて驚いたらいいのかなんなのか。
ラマと首長はしばし見つめあった。
「いや、たぶん事件なんですって!ライキュームに来てください!」
「起きそうなら起きてからでもいいじゃん。起きないかもしれないし」
「あの男から手紙が来たんですって!」
「どの男?」
「数年前に逃げてった男ですよ!」
「そんなん、またお世話になりますーって話でしょ」
「ちがうんですって!そんなのんびりした手紙じゃないんですって!」




ここまで想定して、これどんだけ長くなるの・・・って思ってやめた。

長編を書くのはonion先生に譲ります。
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by Kirill_Books | 2015-03-02 21:00 | 綴られたモノ
1:初老のタウンクライヤー
「ほら、ちょっとこっち来て座んなさいな」
 タウンクライヤーは歩き回っている青髪のヘアスタイリストに声をかけた。
「タウンクライヤーがサボってていいのかよ」
 向かいに用意された椅子に近づきながらヘアスタイリストは言った。
「いいのよ。どこかの知らない人が用意してくれたんだから、消えてなくなるまでは休憩時間さ」
 青髪のヘアスタイリストはしょうがないという顔をして、椅子の横に立つ。
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「立ち仕事が辛く感じてきたなら引退時期じゃねえの?」
 自分はまだまだと言いたいのか、青髪のヘアスタイリストは座らない。
「この肌ピチピチ、髪サラサラのタウンクライヤーが引退するわけないじゃないか!」
「あんたのそれはポリモフだろ」
 さらっと暴露され、タウンクライヤーは狼狽える。
「お、お前なんでそれを…」
 青髪のヘアスタイリストは斜め上の何もない空を見つめ、確か…と思い出そうとした。

「俺はヘアスタイリストだから、人の髪はチェックしてるんだ。
  それは無意識な時もあるが、人を髪で覚える感じだな」
 タウンクライヤーは質問の答えになってないと言い掛けたが、
それに気づいた青髪のスタイリストは、まぁ待てとでもいう感じでタウンクライヤーを手で制した。
「あんた長いことそこに立ってるから、こう言っちゃあれだが
  少しずつ白髪交じりになってきたのがわかったんだよ」
 そう言われて、タウンクライヤーは髪を隠すようにギュッと深く帽子をかぶった。
「タイミング見計らって髪染めてやろうかなって思ってたんだ。
  タウンクライヤーがピンクとか黄色とか派手な色にしないだろうし、
  いっそ曝け出して白髪か銀髪でもとか、
  でもなんでいきなり染めるの勧める?って思うだろうし、
  白髪気にしてたら他人に言われたくないだろうしなとか色々思ってたら、だ」
 タウンクライヤーは帽子から手を離さず話を聞いていた。
「あんたの髪から白髪が消えたんだ。最初はどっかで染めたのかなって思ってた。
  でもよく見ると肌の色も変わってるんだよな。しかも毎日違う色。
  それで、あーポリモフしてるんだなって気づいたわけさ」

 タウンクライヤーはまだ帽子から手を離さずに言った。
「あんた、ポリモフしてまで若作りしてって隠れて笑ってたんだね」
 青髪のヘアスタイリストは驚いた顔をして、顔の前で手を振った。
「とんでもない!ポリモフを選んだのは、今の自分を変えたくないんだろうなと思ったんだ。
  こう言っちゃ失礼かもしれないが、一般的にだ。
  一般的にタウンクライヤーって若い子が目指す職業で、
  若い子が声張り上げてニュースを叫んでるってイメージがあるだろ、一般的なイメージで!」
 タウンクライヤーの顔色を伺いながら、あくまでも"一般的"という言葉を繰り返しながら話を続けた。
「でもあんたみたいなやつがいてもいいよなって思ってた。
  逆に自分の見た目を変えてまで、イメージに合わせなきゃいけない職業かとも思った」
 タウンクライヤーは帽子から手を離した。
「そんないいもんじゃないよ」

  青髪のヘアスタイリストはようやく椅子に座った。
  立って見下ろす形ではなく、同じ目線でタウンクライヤーの話を聞こうとした。
「色々迷って、私もそろそろやめどきだろうかとか、迷って決められなくて一時しのぎのポリモフさ。
  やめることも、この年老いた自分を見せることも選べなかっただけさ」
 青髪のヘアスタイリストは、何も言わず座っていた。
 二人は向かい合っていたが、それぞれは別のことを考えているようだった。
「今度さ、今度の休みの日にさ」
  先に口をついたのは、タウンクライヤーだった。
「どうした?」
  青髪のヘアスタイリストはタウンクライヤーに目を向けた。
「私に似合う色に染めてくれないかな。
  落ち着いた知的に見えるような、本当の私に似合う、隠さなくてもいいような色にさ」
 タウンクライヤーは言ってから少し笑った。
「もちろん!ダークブラウンの綺麗な色が似合うと思うんだ。俺にまかせとけ」
 二人は顔を見合わせて笑った直後、椅子とテーブルは消え、それぞれは仕事に戻っていった。


-----
この前ニュースに、フジテレビで初の女性アナウンサーが定年みたいな
ニュースが出ていて、タウンクライヤーの定年とか長く勤めたらどうなるだろうとか
そういう系のことをぼんやり考えてたらこうなった。
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by Kirill_Books | 2015-03-01 15:41 | 綴られたモノ
タウンクライヤーのバレンタインデー
彼女はクリスティーナ。
勤務先はジェロームの銀行のゴミ箱の横。
人が羨む職業、タウンクライヤーなのだ。

1年前の彼女は仕事をやめようか迷っていた。
人が来たら決められた言葉を決められたとおりに叫んで
人がいない時はきっと休んでいるのだろう。
そう思っていた。
しかし、そうではなかった。
タウンクライヤーの仕事は本当に過酷だったのだ。

例え人が見えずとも、ハイドしてるかもしれない。
動物に変身してるかもしれない。
だから、勤務中は一度も座ってはいけない。

銀行近くだと、銀行員に声をかけるついでに
"news"と言ってくる人たちもいる。
さっき聞いたからわかるだろう?と無視してはいけないのだ。

「最新のニュースはありません!」
「最新のニュースはありません!」
「最新のニュースはありません!」

こんな中身のないことでさえ"news"と聞かれたたびに答えなきゃいけない。
タウンクライヤーとはなんと大変な仕事なんだろうか。

そんなやめようと思っていた仕事を今でも続けている理由。
それはモルツだ。
首長制度が導入され、彼がジェローム首長の使者としてやってきたのだ。
クリスティーナはいつの間にかモルツが気になるようになっていた。

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彼女のシフトは3日勤務1日休み。
2月14日は休みだと、だいぶ前からわかっていた。
彼に話しかけるならその日しかない!
クリスティーナは、勤務の日も暇な時はずっとそのことを考えていた。

「たまたま話しかけるきっかけの日が2月14日なだけ。
 バレンタインを気にしたわけじゃないの、
 たまたま休みがその日だから、それだけよ」
たしか二日前に休みがあったはずなのに、そう言うのだ。


さて、2月13日。
タウンクライヤーの詰め所での引継ぎ業務から帰ってきたクリスティーナは
詰め所でルナのタウンクライヤーからある話を聞いてきた。

「ルナはバレンタインの装飾が施されていて、ハート満開。
タウンクライヤーの前に特別なベンチもできたのよ。
 特に見所は東門の屋上!カップルの場所になっているのよ」

ルナのタウンクライヤーはそういって、
どんな形の装飾なのか事細かに教えてくれた。
東門などタウンクライヤーの立ち位置からだと見えない場所では?と
クリスティーナは言ってみたが
ルナのタウンクライヤーは
「自分の街のことくらい知らないとね」
とだけ言って笑っていた。

カップルの場所…
クリスティーナはルナのタウンクライヤーに聞いた場所を想像していた。

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モルツと2人で…行けないかな。
今年はたぶん無理だろうけど、来年くらいには…。

王様に会うことがあれば、バレンタインの装飾を来年もお願いしよう。
でもモルツは仕事第一に見えるから、ルナまで一緒に行ってくれないかもしれない。
そうか!
王様にはジェロームにもバレンタインの装飾をお願いすればいいんだ。

もう半分休み気分のクリスティーナは勤務終了までそんなことを考えて過ごしていた。


2月14日。
クリスティーナが待っていた日がやってきた。
今日初めてモルツに話しかける。
本当は休みの日には着てはいけないんだけど、タウンクライヤーの制服で来た。
私のことがわからなかったとしても、
この制服でいつもそこに立っているとゴミ箱のほうを指差せば
わかってくれるだろう。

彼女の手には手土産のチョコレート。
初めましての挨拶のためのチョコレート。
「挨拶以上の理由はないわ」
そう言っていたが、クリスティーナはたぶん素直じゃない。

ジェロームに着くと、
クリスティーナの代わりに入っているタウンクライヤーに見つかった。
タウンクライヤーは大きな声で
「あっ!!」
と言ったが慌てて口に手を当てていた。
クリスティーナは口に指をあて
「しーっ!」
と声を出さずに言った。

休みの日に制服を着ている私と
勤務中に決められた言葉以外を発してしまったタウンクライヤーでは
どちらの罪が重いのだろうと
クリスティーナは少しだけ考えた。

さ、モルツのちょうど後ろに立った。
こういう時は人通りの少ない街でよかったとクリスティーナは思った。
呼吸を整える時間も、心を落ち着かせる時間も好きなだけ取れるから。

ただの挨拶だ。
気負う必要はない。
そう考えて落ち着いてからクリスティーナはモルツに声をかけた。
「あ、あの。モルツさんはじめまして」
彼は無言だ。
「私タウンクライヤーをしてます、クリスティーナです。
ほら、いつもあのゴミ箱の近くに立ってるんです」
彼は指差した方向を見もしない。
「あの、今日はちょうど休みで、あ、制服着てるのはたまたまで・・・」
あまりに反応のないモルツにクリスティーナは負けそうになる。

「あの今までお互い見える場所で立ってたのに、話したことないのも不自然かなって。
なのでお近づきのしるしで、これどうぞ」

クリスティーナはモルツにチョコレートの入った包みを渡した。
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「街への貢献に感謝いたします!」
モルツはそう言ってニコッと笑ったかと思うと、また無言になった。

「いや、街にじゃなくて…あの…」
クリスティーナはそれ以上何も言えず、
一部始終を見ていたタウンクライヤーと目も合わせず
帰っていったのだった。



-----
出演
タウンクライヤー:クリスティーナ
ヘラルド:モルツ

撮影場所
ジェローム
ルナ
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バレンタインデーに気づき、慌てて書く。

1枚目のタウンクライヤーとヘラルドの距離感。
それぞれの向きが色んな想像ができて好きだ。
この画像があったから思いついた感じ。
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by Kirill_Books | 2015-02-14 17:15 | 綴られたモノ
[埋まる秘書3/3k] 物書きの策謀
―――

○ 各部担当
あらすじ、台詞 : Kirill
一人称視点 : Kirill

○ 登場人物
Anne : ご存じ北斗ブリテインの首長、本作のヒロイン、何かある度先走らずにはいられない
turnip : 北斗ブリテイン首長の秘書、トリンシックからの出向、カブ
Kirill : 瑞穂シャードの物書き、去年北斗ブリのイベントを手伝った


○ 姉妹話
[埋まる秘書3/3a] ひどい秘書 : ブリ首長になったAnneの日記
[埋まる秘書3/3t] ちょろい首長 : トリンシックDays

―――


今年こそはスケジュール管理をしっかりして、
落ち着いた活動をしたいと思っていたキリル。
お正月用の禅都の神社でもその気持ちをもってお参りしていたというのに
あっさりと新年しょっぱなから出ばなをくじかれ
慌てて新年回りをすませ、北斗に戻ってきたのだ。

この毎度の慌てた感じにせめてキリルだけは慣れてはいけないと心に誓いながら
今日の会議に出向く。

そして、今日はある計画を実行し、
"彼女"に意図を気付かせずに"あるコト"に了承を得る必要がある。

"彼女"が相手であれば容易く成功する計画ではあると思うが…


---

 「では、会議始めましょう。今日のお題はなんでしたっけ?」

会議の主導権を握るのが重要だ。

 「原稿料の内容決めと、募集したキーワードの抽選となります」
 「わーい、キーワード抽選したい!」

さらりと本日のお題を言う秘書と、楽しそうなところに真っ先に飛びつく首長。

 「それは後です。先に原稿料を決めなければ。
  基本的なものは同じでいいとして、毎回変化をつけてる部分を何にするかですね」
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秘書が首長の言葉を一言でさらっとかわして大事な原稿料の話に持っていく。

 「原稿料か……本つながりにしてたんだよねー」

首長が懐かしむように言った。

 「1回目がステイジアンドラゴンで取れる神秘本でしたね」
 「2回目がコーガルで取れる神秘本でした」

本つながりというところに拘るため、ギリギリまで決まらないのが原稿料なのだ。

 「じゃあ、今回はドレッドホーンの尾で作る赤本はどう?
  素材集めが結構大変だけど作りごたえあるよね」
 「流れ的にはとても良い案ですが・・・」

そう、首長にしては良い案だ。
だが、そのまますんなり決まってしまうとまずい。
非常にまずい。 

 「他にもお楽しみアイテムほしいよね」

ここで秘書が上手く同意してくれる。

 「そうですね」

いい流れだ。

 「え、赤本だめ?」

自分でも良い案だと思っていたのだろう。
首長があれ?という顔をしてこちら側二人の顔を見てくる。

 「ダメではないですが、せっかく書いていただいた方々にお渡しする原稿料ですので、
  この原稿料がほしい!と思えるようなものがふさわしいです。
  そう考えると赤本は登場してからすでに9年ほど経過し、
  持ってる方も多いでしょうし、他にも楽しめるアイテムがあったほうが……」
 「そうなんだよねえ」

秘書が的確に行う説明が良い。
私はそれに同意をするだけでいい。

 「でも他に本つながりで良いモノあるかな?うーん、うーん……」

首長が悩みだした、ここがタイミングだ。
ここから勢いで持っていくほかない。

 「私、一ついい案思いつきました」
 「どんなものです?」

秘書があくまでも一意見を伺う形でこちらに目を向けた。
私は秘書を見ずに、アン首長を見て言った。

 「ただ、これを用意するにはかなり困難が伴うと思うのです。
  それに立ち向かうくらいの覚悟がアン首長にあるかどうかです」
 「え、困難?そんなに集めるの大変なのもなの?」

いつもならこんな話し方はしないし、
アン首長一人で集めるものだという言い方もしない。
だからこそ、どれだけ大変なものかと不安がっているのが見て取れる。

 「ある意味簡単かもしれないし、大変かもしれない。
  でもこれはアン首長だからこそな、良い原稿料になると思うのです」
 「どういうものを考えてるの?なになに?」

余りに不安がらせて、やる気を削いではいけない。
勢いで迫って、内容を知る前に"やる"という言葉を得なければ。

 「なるほど。アン首長がこのイベントにかける思い次第ということですね」

ここで良い形で秘書のサポートが入る。
そうなのだ、首長の気持ち次第なのだ。

 「で、景品にしようとしてるのは何なの?」
 「アン首長。ここはもう物が何かという問題ではないです。」

内容が知りたい首長に、秘書がぴしゃりと制す。
そうなのだ、もう内容がどうのという問題ではないのだ。

 「アン首長のこのイベントへの強い思いがあるかどうかって話ですよ」
 「え?そういう話なの?」

気持ち次第と言う方向に持っていって、引く首長ではないだろう。
この流れに戸惑い、なかなか乗って来れない首長に無理やり問いただす。

 「さあ、どうします?アン首長、この企画にかける意気込み次第ですよ?」
 「どうなんです?アン首長!」

秘書と私の二人がかりで、
まるで魔王でも倒しに行く冒険者に覚悟を問うような勢いで言う。

 「あ、あるよ!がんばるよ!もちろんじゃないかっ!」
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そうですよね。
アン首長なら、そう答えますよね。
予想はしていたけど、ちゃんと聞けて良かった。

 「言いましたね」
 「聞きました。ちゃんとメモもしました」

秘書がすぐにメモを取っていた。
さすがだ。

 「で、何なの?」
 「アン首長の新作小説を数冊に分割し、1作応募につき1冊ランダムでお渡しです」
 「えっ!!」

そう。
本つながりにするなら、もう本を書けばいいのだ。
アン首長の"色んな本を読みたい!"のわがままに答えるために始まったのが
文芸大会なのだ。
だから、お礼にアン首長も書くのがいいんだ!

 「いやー、ランダムでもらえるというのがいいですね。
  その場でみんなで見せっこして完成というのがね」
 「打ち上げパーティでみんなでアン首長の小説を朗読する姿が目に浮かびますね」

秘書がさらっとえげつないことを言う。
そう言えば昔もアン首長に自作の話を朗読させようとしていたな……。
たまにすごいひどいことを思いつくのに、さらっと言うからみんな気づかないかもしれないが
秘書は結構えげつない。

 「え・・・私一人で書くの?」

思いっきり不安そう。
やっぱりやらないとか言っちゃう?前言撤回しちゃう?

 「楽しそうだなー!アン首長がんばって!」

とりあえず励ます!やる気にさせる!

 「先ほどやると宣言してたじゃないですか。これ以上ない文芸大会らしいものとなりますよ」
 「事前にカブと話してた時は無理な案かと思ったけど、上手くアン首長がやると言ってくれてよかった」
 「アン首長の性格上、あの流れでは断れませんよ。」

ネタばらしをする。
そうなんだ。
事前に二人で話して、アン首長ならうまく流れ持ってけばやるよねって話はしてたんだ。
この案、おもしろいと思うの!
どうしてもやってほしいの!

 「ということで……」
 「「やりますよね?」」

トドメの一言を言わせる。
こういう時は秘書と気が合うんだ。

 「う、ううう……。や、やるよ!がんばるよ!
  でも応募の方と2作は無理かも……前回もギリギリだったし……」
 「それはもうすべての時間を原稿料用の長編へ向けてがんばってください」
 「前回はギリギリじゃなくて、展示に間に合っただけで締切には間に合ってません!」

前回は締め切って展示が始まってからこっそり置いたでしょ!
アン首長の書くのが遅れたら打ち上げパーティも延期か……
準備もあるから、余裕を持った執筆をしていただきたい!

 「じゃあ、原稿料の内容も決まりましたし、キーワード抽選に入りましょうか」
 「アン首長、ヘラルドに応募されたキーワードは持ってきましたか?」
 「も、持ってきたよ……」

アン首長が、心なしかちょっと元気がなくなってきている。
楽しんで書いてくれないと、良いものにならないじゃないか!

 「アン首長、決まったんだから楽しんで書いて!」
 「そ、そうだよね!私も決まったキーワードで書こうかな!」
 「そうそう、そのほうがアン首長らしいです」

ポジティブなのが首長のいいところなのだ。
どうにもならなかったら……ま、秘書がきっとどうにかするだろう。
部屋から出られなくして
付きっ切りで書き上げるまで遊びに行かせないくらいの気合で
監視でもなんでもするはずだ。
いや、さらっと打ち上げパーティの日程を延期するか。
意外と首長に甘々だからな……

 「結構集まったねー。じゃあ、最初の1つはアン首長からどうぞ」
 「わーい、じゃあ一つ目!」

積み上げられた本から1冊抜き取る。
開いて1ページ。
ちらっと眼で読んで微かに表情が変わるのを見届ける。

 「さ、読み上げてください」
 「一つ目は……" モンバット "です!」
 「ほぉ……これはどうだろ?簡単?難しい?」

書く側はここからがスタートだ。
キーワードを使って何を書こうか。
どんなことを想像しようか。

それが自然に頭に浮かぶまで何度もキーワードを読む。
いつかそのキーワードに絵が見えて、景色が広がって、そして動いていく。
そこまできたら、あとはその動きをなぞるように文字にすればいいだけだ。

 「他のキーワードにもよりますね。では、きりるさんもどうぞ」
 「キーワード決まったら正式告知できるかな!」
 「そうですね、原稿料も決まったことだし、基本的な部分は大丈夫じゃないでしょうか」
 「わーいわーい、これで第3回北斗文芸大会スタートできるね!」
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まだ最初のほんの一歩。
決めることもまだまだある。
それでもこのキーワード決めをすると、始まるなーと実感する。

忙しくなる前のほんの少し。
つかのまの時間をもう少しだけ楽しもう。


―――

○ アーカイブ
[埋まる秘書1/3t] キリルの年始回り : トリンシックDays
[埋まる秘書1/3k] Kirillの年始回り : Kirillと不思議な本

[埋まる秘書2/3a] 沈む首長 : ブリ首長になったAnneの日記
[埋まる秘書2/3t] 沈むアン首長 : トリンシックDays
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by Kirill_Books | 2015-01-29 23:40 | 綴られたモノ
[埋まる秘書1/3k] Kirillの年始回り
○ 各部担当
あらすじ、台詞 : turnip
一人称視点 : Kirill
○ 登場人物
turnip : 北斗ブリテイン首長の秘書、トリンシックからの出向、カブ
Kirill : 瑞穂シャードの物書き、去年北斗ブリのイベントを手伝った
○ 姉妹話
[埋まる秘書1/3t] キリルの年始回り : トリンシックDays

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今年のブリタニアは暖冬なのか、雪ひとつないお正月だった。
"パンッ パンッ"
時期が少しずれてしまったが、禅都の神社にお参りをする。
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2015年が始動したのだ。
色んな場所で書いたり読んだりができますようにと、禅都にお参りに来た。
準備を丁寧に、焦って動かなくていいようにスケジュール管理をがんばると。
瑞穂、そしてここ北斗ときて、あと6か所の禅都へお参りめぐりだ。

お参りが終わったら、銀行の整理整頓。
いらないものは持ち越さないって去年できればよかったんだけど。
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「懐かしいなー」
第1回目の北斗文芸大会でもらった感想本を手に取った。
初めてガーゴイル本を使って書いてみたんだっけ。
私には珍しい淡い恋心的な話にしたんだよなー。
そう言えばあの秘書モチーフの話があったんだ。
第1回目の文芸大会で提出した本を、バックパックに入れなおす。

これからアン首長と秘書のターニップ……いわゆるカブへ挨拶に行くつもりだったのだ。
これを見せてちょっと去年の懐かし話でもしよう。


……と思っていたのだが、結果的にはアン首長は見つからなかった。
公邸で飲んだくれてるんじゃないかと思ったのだけど、まだお正月休み満喫中らしい。
仕方がないのでアン首長は諦め、先に秘書の方へ挨拶に行くことにした。



「「あけましておめでとうございます」」

トリンシックバリア島のカブの家に行くと、こちらは在宅していた。
在宅……と言っていいのか?
埋まってるだけと言うか、こんなにでかかったっけ?

ま、カブには違いない。
たぶん。
いつもの感じでしゃべってるし。
う、うん。


「はい、これまふぃ錦」
「わざわざありがとうございます」
お神酒代わりにと持ち込んだまふぃ錦を渡すが、
渡すが……とりあえず置く。

「ブリの公邸にも行ってみたんだけど、誰も居なかったから押しかけちゃった」
「おかしいですね、アンさんはもう公務に出ているはずなのですが」

そうかお休みは終了してたのか。
あの公邸を見るに勝手に正月休み延長してそうな気配も感じるけど、
それよりもまずはこっちだ。

足もとにいる白いでかいのを、固定観念なしで受け入れる気持ちで見下ろす。
この、まるでいつもやってることで普通ですよみたいな感じで
いられても違和感感じまくりで目をそらせない。

「カブは何してるの?」
「私は冬休みをいただいていました」

カブって実は結構休んでない?
首長より休んでない?
大丈夫?
あの首長放置で大丈夫?

「今が一番良い時期ですので~」
まるで今年の暖冬がとてもうれしくて日の光を漏らさないで
全部吸う!って勢いで空に顔を向けている。

「そ、そうなんだ……」
これを日常のこととして受け入れるには、
私もう少しかかりそうだよ、カブ……

とりあえずずっと見下ろしてるのもどうかって感じで
横にベンチを持ってきて座ってみる。
視線を交わさない程度の距離感大事!
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「今年もイベントする予定?」
「もちろんですとも。キリルさんにもまたお願いしたいです」
「文芸大会ね。あ、そう言えば」

さっき銀行から取り出してきた本を取り出す。

「それは?」
カブがこっちを向いてるのかどうかはよくわからないが、
とりあえず手に取った本は見えてるようだ。

「1回目の文芸大会で書いた本、銀行に寄ったら懐かしくなって持ってきちゃった」
「おお」
「ちょうどバレンタインの時期だったよねぇ。今度は春? 夏?」
「――んぐっ」
「んぐ?」

どうした?
虫にでも食われそうになった?

「どうしたの、カブ?」
「いえぇぇ……」

見た目が変わらないからよくわからないけど、
なんか都合が悪い感じ?
さっきのまったりした空気が急に変わって動き始めた。

「ええと、1年に2回開催を目標、というか予定にしていますので……。
去年と開催時期を合わせたいというか、合わせないと2回出来ないというか……。
作品の募集期間が、2月になります」
「えっ」
「すっかり忘れていました」
「えっ」

えっ……
ちょっと待って!
去年の今頃はさすがに1回目で1週間くらいでガガガッとやったけど
でもですよ。
2回目はさすがに勢いではできなくて、準備に2か月くらいかけてたんですよ?
夏真っ盛りに、秋の文芸大会ってなんか早すぎない?とか
言いながら結局最後はすごい忙しかったっていう、
長期にわたるからそれなりな準備も必要だねっていうイベントだったはずなんですよ?

3回目ならなおさら準備期間かかるでしょ?
そういうもんですよね?
違うの?

色んな言いたいことはあるけど、どこから言えばいいのか、わからない。
さっきスケジュール管理をがんばるって神社でお参りしてきたばかりなんですけど……。

「1月半分終わってるよ! い、いや大丈夫だよね、アン様が準備進めてるんだよね?」
「まさか!」
「だよね!」

この展開!
アン様が先に準備進めれば、前回みたいに焦り
逆にアン様が何もやらなきゃ、やらないで今回のように焦り……

カブ、仕事するんだ。
君しかいない……

「とりあえずアン様捕まえないと、カブ心当たりある?」
「2回目の時のように逃げ回っているわけではないですから、それなりに絞れると思います。
キリルさんも手伝ってくれますか?」
「うーん……、そうしたいんだけど他のシャードにも行かなきゃだから、今すぐは無理。
でも一通り回ったらすぐ戻ってくるよ」
「よろしくおねがいします!」

他を回ってる間に、前回の問題点と今回の開催についての提案と……
さらっと資料は作れるだろう。

とりあえず急ぐ!
スケジュール管理大事!

そう思って立ち上がると、まだ土に埋まってるカブに気づいた。

「ってカブ、自分で抜けられないよね。急がないと」
「ああいえ別に」

横の畑に置いてあったピッチフォークを見つける。
これでグイッと刺して持ち上げたら、引っこ抜けるかな?
葉っぱ引っ張る方が早い?
とりあえずぶっ刺してみるか。

「これか! いくよ!!」
「それはダメですー!!!」
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by Kirill_Books | 2015-01-15 23:00 | 綴られたモノ
良かれの狂気
毎日遊びたくて、彼女の家に行っていた。
いつもいないから、家の中で待たせてもらっていた。

いつしか、なぜか家の中に入れなくなったので
丸椅子を持ち込んで家の前で待っていた。

街で見かけるかもと、彼女のメインにしている銀行でも待っていた。

ある日、彼女の家があった場所は更地になっていた。
彼女を街で見かけることがなくなった。

引っ越しでもしたのかしら?
何か悪いことが起きて、来れなくなったのかしら!

心配。
私すごく心配。

世界中いろんなところに行って彼女を探した。

もしかしたら別の世界?と他の破片世界も探した。

彼女は見つからなかった。

私に思い出だけを残したの?
この世界に置いて行かれて、
彼女を思い出すたびに悲しくなる。

でも、きっと彼女はそんなことを望んでない。

きっと彼女はこの世界にとどまりたかったはず。
だから私は彼女の思いを継いで、彼女を作る。

彼女と同じ名前になって
彼女と同じ格好をした。

彼女の銘の家具に囲まれたくて大工を習った。
彼女の銘の服を着たくて裁縫も習った。

別の私でいるときは、マネキンを使って彼女の人形を作っておくの。

いつまでも彼女と一緒。
大丈夫。
大丈夫だから、いつでも戻ってきて。

急にいなくなったこと、怒らないよ。
また一緒に遊ぼうね。

いつまでも私は待ってるから。


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一見、普通の行為や、良かれと思った行為も
他者から見るとと狂気に感じることがあります。

大げさに名前を変える行為を書いたけど
そこまでではなくとも、
他から見てるとちょっとそれやばくない?と思う行動も
本人から見ると思いから来た正しい行動なわけで。

思いって方向間違うと、とんでもないなと思う。
でもそれを指摘しても本人には伝わらない。
目が覚めてないのは私なのか、彼女なのか。
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by Kirill_Books | 2014-12-05 13:23 | 綴られたモノ