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[埋まる秘書3/3k] 物書きの策謀
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○ 各部担当
あらすじ、台詞 : Kirill
一人称視点 : Kirill

○ 登場人物
Anne : ご存じ北斗ブリテインの首長、本作のヒロイン、何かある度先走らずにはいられない
turnip : 北斗ブリテイン首長の秘書、トリンシックからの出向、カブ
Kirill : 瑞穂シャードの物書き、去年北斗ブリのイベントを手伝った


○ 姉妹話
[埋まる秘書3/3a] ひどい秘書 : ブリ首長になったAnneの日記
[埋まる秘書3/3t] ちょろい首長 : トリンシックDays

―――


今年こそはスケジュール管理をしっかりして、
落ち着いた活動をしたいと思っていたキリル。
お正月用の禅都の神社でもその気持ちをもってお参りしていたというのに
あっさりと新年しょっぱなから出ばなをくじかれ
慌てて新年回りをすませ、北斗に戻ってきたのだ。

この毎度の慌てた感じにせめてキリルだけは慣れてはいけないと心に誓いながら
今日の会議に出向く。

そして、今日はある計画を実行し、
"彼女"に意図を気付かせずに"あるコト"に了承を得る必要がある。

"彼女"が相手であれば容易く成功する計画ではあると思うが…


---

 「では、会議始めましょう。今日のお題はなんでしたっけ?」

会議の主導権を握るのが重要だ。

 「原稿料の内容決めと、募集したキーワードの抽選となります」
 「わーい、キーワード抽選したい!」

さらりと本日のお題を言う秘書と、楽しそうなところに真っ先に飛びつく首長。

 「それは後です。先に原稿料を決めなければ。
  基本的なものは同じでいいとして、毎回変化をつけてる部分を何にするかですね」
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秘書が首長の言葉を一言でさらっとかわして大事な原稿料の話に持っていく。

 「原稿料か……本つながりにしてたんだよねー」

首長が懐かしむように言った。

 「1回目がステイジアンドラゴンで取れる神秘本でしたね」
 「2回目がコーガルで取れる神秘本でした」

本つながりというところに拘るため、ギリギリまで決まらないのが原稿料なのだ。

 「じゃあ、今回はドレッドホーンの尾で作る赤本はどう?
  素材集めが結構大変だけど作りごたえあるよね」
 「流れ的にはとても良い案ですが・・・」

そう、首長にしては良い案だ。
だが、そのまますんなり決まってしまうとまずい。
非常にまずい。 

 「他にもお楽しみアイテムほしいよね」

ここで秘書が上手く同意してくれる。

 「そうですね」

いい流れだ。

 「え、赤本だめ?」

自分でも良い案だと思っていたのだろう。
首長があれ?という顔をしてこちら側二人の顔を見てくる。

 「ダメではないですが、せっかく書いていただいた方々にお渡しする原稿料ですので、
  この原稿料がほしい!と思えるようなものがふさわしいです。
  そう考えると赤本は登場してからすでに9年ほど経過し、
  持ってる方も多いでしょうし、他にも楽しめるアイテムがあったほうが……」
 「そうなんだよねえ」

秘書が的確に行う説明が良い。
私はそれに同意をするだけでいい。

 「でも他に本つながりで良いモノあるかな?うーん、うーん……」

首長が悩みだした、ここがタイミングだ。
ここから勢いで持っていくほかない。

 「私、一ついい案思いつきました」
 「どんなものです?」

秘書があくまでも一意見を伺う形でこちらに目を向けた。
私は秘書を見ずに、アン首長を見て言った。

 「ただ、これを用意するにはかなり困難が伴うと思うのです。
  それに立ち向かうくらいの覚悟がアン首長にあるかどうかです」
 「え、困難?そんなに集めるの大変なのもなの?」

いつもならこんな話し方はしないし、
アン首長一人で集めるものだという言い方もしない。
だからこそ、どれだけ大変なものかと不安がっているのが見て取れる。

 「ある意味簡単かもしれないし、大変かもしれない。
  でもこれはアン首長だからこそな、良い原稿料になると思うのです」
 「どういうものを考えてるの?なになに?」

余りに不安がらせて、やる気を削いではいけない。
勢いで迫って、内容を知る前に"やる"という言葉を得なければ。

 「なるほど。アン首長がこのイベントにかける思い次第ということですね」

ここで良い形で秘書のサポートが入る。
そうなのだ、首長の気持ち次第なのだ。

 「で、景品にしようとしてるのは何なの?」
 「アン首長。ここはもう物が何かという問題ではないです。」

内容が知りたい首長に、秘書がぴしゃりと制す。
そうなのだ、もう内容がどうのという問題ではないのだ。

 「アン首長のこのイベントへの強い思いがあるかどうかって話ですよ」
 「え?そういう話なの?」

気持ち次第と言う方向に持っていって、引く首長ではないだろう。
この流れに戸惑い、なかなか乗って来れない首長に無理やり問いただす。

 「さあ、どうします?アン首長、この企画にかける意気込み次第ですよ?」
 「どうなんです?アン首長!」

秘書と私の二人がかりで、
まるで魔王でも倒しに行く冒険者に覚悟を問うような勢いで言う。

 「あ、あるよ!がんばるよ!もちろんじゃないかっ!」
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そうですよね。
アン首長なら、そう答えますよね。
予想はしていたけど、ちゃんと聞けて良かった。

 「言いましたね」
 「聞きました。ちゃんとメモもしました」

秘書がすぐにメモを取っていた。
さすがだ。

 「で、何なの?」
 「アン首長の新作小説を数冊に分割し、1作応募につき1冊ランダムでお渡しです」
 「えっ!!」

そう。
本つながりにするなら、もう本を書けばいいのだ。
アン首長の"色んな本を読みたい!"のわがままに答えるために始まったのが
文芸大会なのだ。
だから、お礼にアン首長も書くのがいいんだ!

 「いやー、ランダムでもらえるというのがいいですね。
  その場でみんなで見せっこして完成というのがね」
 「打ち上げパーティでみんなでアン首長の小説を朗読する姿が目に浮かびますね」

秘書がさらっとえげつないことを言う。
そう言えば昔もアン首長に自作の話を朗読させようとしていたな……。
たまにすごいひどいことを思いつくのに、さらっと言うからみんな気づかないかもしれないが
秘書は結構えげつない。

 「え・・・私一人で書くの?」

思いっきり不安そう。
やっぱりやらないとか言っちゃう?前言撤回しちゃう?

 「楽しそうだなー!アン首長がんばって!」

とりあえず励ます!やる気にさせる!

 「先ほどやると宣言してたじゃないですか。これ以上ない文芸大会らしいものとなりますよ」
 「事前にカブと話してた時は無理な案かと思ったけど、上手くアン首長がやると言ってくれてよかった」
 「アン首長の性格上、あの流れでは断れませんよ。」

ネタばらしをする。
そうなんだ。
事前に二人で話して、アン首長ならうまく流れ持ってけばやるよねって話はしてたんだ。
この案、おもしろいと思うの!
どうしてもやってほしいの!

 「ということで……」
 「「やりますよね?」」

トドメの一言を言わせる。
こういう時は秘書と気が合うんだ。

 「う、ううう……。や、やるよ!がんばるよ!
  でも応募の方と2作は無理かも……前回もギリギリだったし……」
 「それはもうすべての時間を原稿料用の長編へ向けてがんばってください」
 「前回はギリギリじゃなくて、展示に間に合っただけで締切には間に合ってません!」

前回は締め切って展示が始まってからこっそり置いたでしょ!
アン首長の書くのが遅れたら打ち上げパーティも延期か……
準備もあるから、余裕を持った執筆をしていただきたい!

 「じゃあ、原稿料の内容も決まりましたし、キーワード抽選に入りましょうか」
 「アン首長、ヘラルドに応募されたキーワードは持ってきましたか?」
 「も、持ってきたよ……」

アン首長が、心なしかちょっと元気がなくなってきている。
楽しんで書いてくれないと、良いものにならないじゃないか!

 「アン首長、決まったんだから楽しんで書いて!」
 「そ、そうだよね!私も決まったキーワードで書こうかな!」
 「そうそう、そのほうがアン首長らしいです」

ポジティブなのが首長のいいところなのだ。
どうにもならなかったら……ま、秘書がきっとどうにかするだろう。
部屋から出られなくして
付きっ切りで書き上げるまで遊びに行かせないくらいの気合で
監視でもなんでもするはずだ。
いや、さらっと打ち上げパーティの日程を延期するか。
意外と首長に甘々だからな……

 「結構集まったねー。じゃあ、最初の1つはアン首長からどうぞ」
 「わーい、じゃあ一つ目!」

積み上げられた本から1冊抜き取る。
開いて1ページ。
ちらっと眼で読んで微かに表情が変わるのを見届ける。

 「さ、読み上げてください」
 「一つ目は……" モンバット "です!」
 「ほぉ……これはどうだろ?簡単?難しい?」

書く側はここからがスタートだ。
キーワードを使って何を書こうか。
どんなことを想像しようか。

それが自然に頭に浮かぶまで何度もキーワードを読む。
いつかそのキーワードに絵が見えて、景色が広がって、そして動いていく。
そこまできたら、あとはその動きをなぞるように文字にすればいいだけだ。

 「他のキーワードにもよりますね。では、きりるさんもどうぞ」
 「キーワード決まったら正式告知できるかな!」
 「そうですね、原稿料も決まったことだし、基本的な部分は大丈夫じゃないでしょうか」
 「わーいわーい、これで第3回北斗文芸大会スタートできるね!」
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まだ最初のほんの一歩。
決めることもまだまだある。
それでもこのキーワード決めをすると、始まるなーと実感する。

忙しくなる前のほんの少し。
つかのまの時間をもう少しだけ楽しもう。


―――

○ アーカイブ
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[埋まる秘書1/3k] Kirillの年始回り : Kirillと不思議な本

[埋まる秘書2/3a] 沈む首長 : ブリ首長になったAnneの日記
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by Kirill_Books | 2015-01-29 23:40 | 綴られたモノ
[埋まる秘書1/3k] Kirillの年始回り
○ 各部担当
あらすじ、台詞 : turnip
一人称視点 : Kirill
○ 登場人物
turnip : 北斗ブリテイン首長の秘書、トリンシックからの出向、カブ
Kirill : 瑞穂シャードの物書き、去年北斗ブリのイベントを手伝った
○ 姉妹話
[埋まる秘書1/3t] キリルの年始回り : トリンシックDays

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今年のブリタニアは暖冬なのか、雪ひとつないお正月だった。
"パンッ パンッ"
時期が少しずれてしまったが、禅都の神社にお参りをする。
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2015年が始動したのだ。
色んな場所で書いたり読んだりができますようにと、禅都にお参りに来た。
準備を丁寧に、焦って動かなくていいようにスケジュール管理をがんばると。
瑞穂、そしてここ北斗ときて、あと6か所の禅都へお参りめぐりだ。

お参りが終わったら、銀行の整理整頓。
いらないものは持ち越さないって去年できればよかったんだけど。
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「懐かしいなー」
第1回目の北斗文芸大会でもらった感想本を手に取った。
初めてガーゴイル本を使って書いてみたんだっけ。
私には珍しい淡い恋心的な話にしたんだよなー。
そう言えばあの秘書モチーフの話があったんだ。
第1回目の文芸大会で提出した本を、バックパックに入れなおす。

これからアン首長と秘書のターニップ……いわゆるカブへ挨拶に行くつもりだったのだ。
これを見せてちょっと去年の懐かし話でもしよう。


……と思っていたのだが、結果的にはアン首長は見つからなかった。
公邸で飲んだくれてるんじゃないかと思ったのだけど、まだお正月休み満喫中らしい。
仕方がないのでアン首長は諦め、先に秘書の方へ挨拶に行くことにした。



「「あけましておめでとうございます」」

トリンシックバリア島のカブの家に行くと、こちらは在宅していた。
在宅……と言っていいのか?
埋まってるだけと言うか、こんなにでかかったっけ?

ま、カブには違いない。
たぶん。
いつもの感じでしゃべってるし。
う、うん。


「はい、これまふぃ錦」
「わざわざありがとうございます」
お神酒代わりにと持ち込んだまふぃ錦を渡すが、
渡すが……とりあえず置く。

「ブリの公邸にも行ってみたんだけど、誰も居なかったから押しかけちゃった」
「おかしいですね、アンさんはもう公務に出ているはずなのですが」

そうかお休みは終了してたのか。
あの公邸を見るに勝手に正月休み延長してそうな気配も感じるけど、
それよりもまずはこっちだ。

足もとにいる白いでかいのを、固定観念なしで受け入れる気持ちで見下ろす。
この、まるでいつもやってることで普通ですよみたいな感じで
いられても違和感感じまくりで目をそらせない。

「カブは何してるの?」
「私は冬休みをいただいていました」

カブって実は結構休んでない?
首長より休んでない?
大丈夫?
あの首長放置で大丈夫?

「今が一番良い時期ですので~」
まるで今年の暖冬がとてもうれしくて日の光を漏らさないで
全部吸う!って勢いで空に顔を向けている。

「そ、そうなんだ……」
これを日常のこととして受け入れるには、
私もう少しかかりそうだよ、カブ……

とりあえずずっと見下ろしてるのもどうかって感じで
横にベンチを持ってきて座ってみる。
視線を交わさない程度の距離感大事!
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「今年もイベントする予定?」
「もちろんですとも。キリルさんにもまたお願いしたいです」
「文芸大会ね。あ、そう言えば」

さっき銀行から取り出してきた本を取り出す。

「それは?」
カブがこっちを向いてるのかどうかはよくわからないが、
とりあえず手に取った本は見えてるようだ。

「1回目の文芸大会で書いた本、銀行に寄ったら懐かしくなって持ってきちゃった」
「おお」
「ちょうどバレンタインの時期だったよねぇ。今度は春? 夏?」
「――んぐっ」
「んぐ?」

どうした?
虫にでも食われそうになった?

「どうしたの、カブ?」
「いえぇぇ……」

見た目が変わらないからよくわからないけど、
なんか都合が悪い感じ?
さっきのまったりした空気が急に変わって動き始めた。

「ええと、1年に2回開催を目標、というか予定にしていますので……。
去年と開催時期を合わせたいというか、合わせないと2回出来ないというか……。
作品の募集期間が、2月になります」
「えっ」
「すっかり忘れていました」
「えっ」

えっ……
ちょっと待って!
去年の今頃はさすがに1回目で1週間くらいでガガガッとやったけど
でもですよ。
2回目はさすがに勢いではできなくて、準備に2か月くらいかけてたんですよ?
夏真っ盛りに、秋の文芸大会ってなんか早すぎない?とか
言いながら結局最後はすごい忙しかったっていう、
長期にわたるからそれなりな準備も必要だねっていうイベントだったはずなんですよ?

3回目ならなおさら準備期間かかるでしょ?
そういうもんですよね?
違うの?

色んな言いたいことはあるけど、どこから言えばいいのか、わからない。
さっきスケジュール管理をがんばるって神社でお参りしてきたばかりなんですけど……。

「1月半分終わってるよ! い、いや大丈夫だよね、アン様が準備進めてるんだよね?」
「まさか!」
「だよね!」

この展開!
アン様が先に準備進めれば、前回みたいに焦り
逆にアン様が何もやらなきゃ、やらないで今回のように焦り……

カブ、仕事するんだ。
君しかいない……

「とりあえずアン様捕まえないと、カブ心当たりある?」
「2回目の時のように逃げ回っているわけではないですから、それなりに絞れると思います。
キリルさんも手伝ってくれますか?」
「うーん……、そうしたいんだけど他のシャードにも行かなきゃだから、今すぐは無理。
でも一通り回ったらすぐ戻ってくるよ」
「よろしくおねがいします!」

他を回ってる間に、前回の問題点と今回の開催についての提案と……
さらっと資料は作れるだろう。

とりあえず急ぐ!
スケジュール管理大事!

そう思って立ち上がると、まだ土に埋まってるカブに気づいた。

「ってカブ、自分で抜けられないよね。急がないと」
「ああいえ別に」

横の畑に置いてあったピッチフォークを見つける。
これでグイッと刺して持ち上げたら、引っこ抜けるかな?
葉っぱ引っ張る方が早い?
とりあえずぶっ刺してみるか。

「これか! いくよ!!」
「それはダメですー!!!」
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by Kirill_Books | 2015-01-15 23:00 | 綴られたモノ